山火事×温暖化、負の連鎖 日経新聞より

今年の夏も本当に暑かったですね。

今日は10月も中旬を過ぎたというのに、山口市では日中は30度近くまで気温が上がりました。

地球温暖化がより深刻化している事を実感せざるを得ません。

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気候変動が誘発する山火事が今、世界の森林を燃やし続けている。森林の焼失は大量の二酸化炭素(CO2)を排出し、地球温暖化を加速させる「負の連鎖」を引き起こす。2023年にカナダで起きた記録的な火災は、同国が通常の経済活動で年間に排出する3倍の量のCO2を一気に出した。悪夢のサイクル、歯止めをかける対策が急務だ。

「23年の気温は少なくとも過去10万年の間で最も高かった可能性が高い」。欧州連合(EU)の気象情報機関、コペルニクス気候変動サービスのサマンサ・バージェス副所長は9日、とどまる気配のない地球温暖化の危機を訴えた。23年の世界の平均気温は人類史に残る高さとなり、事態の切迫度が増していることを浮き彫りにした。

高温・乾燥の影響で23年に目立ったのが山火事だ。特にカナダは深刻な被害に見舞われた。「気候変動に伴い、年を追うごとに激しい山火事が起きている。通常発生しない場所でも火災が起き始めた」。トルドー首相は危機感をあらわにする。

カナダの山火事は4月から増え、5月には西部アルバータ州が州非常事態を宣言した。6月には東部ケベック州でも多数の火災が発生し、多くの人が避難を迫られた。西部ブリティッシュコロンビア州では同州史上で最大規模の山火事が起きた。

カナダ森林火災センターによると、これらの火災が燃やした範囲は18万平方キロメートル以上に及ぶ。日本の国土面積のほぼ半分に当たる面積だ。山火事の煙は国境を越え、米ニューヨークでは大気汚染も引き起こした。

EUのコペルニクス大気監視サービスから入手したデータから算出すると、23年のカナダの山火事に伴うCO2排出量は推計約17億トンという膨大な量にのぼった。カナダが石油や天然ガスを消費し、年間の経済活動で排出する温暖化ガスはCO2換算で約6億トン。昨年の山火事は、約3年分のCO2を一気に排出したことになる。

カナダに限らない。米シンクタンクの世界資源研究所によると、世界では今、山火事によって森林が続々と姿を消している。20〜22年の年間平均焼失面積は約830万ヘクタールと、約20年前の01〜03年の平均のほぼ2倍に拡大した。

これは「地球の肺」といわれるアマゾンの熱帯雨林があるブラジルで、伐採などで年間に失われる森林面積の2倍以上。火災は今や伐採以上の威力と損失をもたらす。

同研究所が主因に挙げるのが気候変動だ。「気候変動が山火事を誘発し、深刻な山火事が気候変動を助長する」。経済協力開発機構(OECD)のマルタ・アルビノーロ政策アナリストはそう指摘する。熱波や乾燥で落雷や火の不始末による山火事が増え、その山火事が大量のCO2を排出し、さらなる温暖化を招く。

既に地球は負のスパイラルに陥ったのかもしれない。国連環境計画(UNEP)などの22年報告書によると、大規模な山火事の発生は2010〜20年に比べ、30年までに世界で最大14%、50年までに同33%増える見通しだ。温暖化の進展を見据え、UNEPは「これまで被害がなかった地域でも異常な火災が増加する」と警鐘を鳴らす。

EUの主要機関が23年11月に大筋合意した「自然再生法案」は山火事の予防策を盛った。枯れて炭化した植物が積み重なった泥炭地の乾燥が火災の一因とし、「湿潤化」の対策を講じる。EUの執行機関の欧州委員会では、加盟国の森林を連携して監視する仕組みの法制化も検討中だ。

気候変動と山火事の負の連鎖。断ち切るべく、世界的な知恵の結集が必要だ。

<要約>

気候変動が世界中で山火事を誘発し、その山火事が大量の二酸化炭素を排出し、さらなる温暖化を招くという「負の連鎖」を引き起こしている。一例として、2023年にカナダで起きた最大規模の火災は、同国が通常の経済活動で年間に排出する3倍の量のCO2を一気に出した。温暖化の進展と山火事の増加見据え、EUの主要機関では泥炭地の乾燥を防ぐべく湿潤化の対策を講じ、加盟国の森林を連携して監視する仕組みの法制化も検討している。

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