主役はAIに譲らない 2024年5月10日 日経新聞より
今年度の新しい試みとして、日経新聞で気になった記事(独断ですが)をここに貯めていきたいと思います。また、勝手ながら私なりの記事の要約も掲載しようと思います。
昨今、新聞をとっている家庭が少ないので、そもそも新聞を読むという習慣がない生徒がほとんどです。生徒には読み物(プロが書いた文章を音読するのも良い)として、さらには、時事問題のインプットツールとして英作文対策に活用できたらと思います。
日本経済新聞(2024年5月10日発行)
教育進化論~主役はAIに譲らない~
生成AI(人工知能)が世界で3億人分の雇用を自動化するとの予測が出る中、学校はどんな人を育てるべきか。手がかりを求めて年数千人が訪れる公立校が米西部サンディエゴにある。2000年開校で16校に幼稚園から高校段階の6千人超が通う「ハイ・テック・ハイ(HTH)」だ。2月下旬、HTHメサ校の教室では12年生(高3)が数人で班を作り、木材を工具で切って組み立てる作業に没頭していた。ミニゴルフのコース作りを通じて物理法則の摩擦や力の作用を学んでいるという。
<教科書・試験なし>
決まった教科書や定期試験はない。授業の大半は教科横断でものづくりや社会課題の解決策を探る「プロジェクト型学習」を占める。創造力や知識を応用する力を伸ばし、革新を生める人材を育てるためだ。20年近く勤める男性教員は「AIはアイディアを出せても物はつくれない。生徒には自分で創造性豊かな物を作れるようになってほしい」と話す。学力も高い。「公正(Equity)」を重視し、学費は無料、入学者は抽選、生徒の半数は低所得層の子だ。それでも学力テストの成績は州平均を上回り、大学進学率は9割に上る。
HTHの教育が関心を集める背景には人を財産とみなす「人的資本経営」の世界的な広がりがある。企業による社員教育やリスキリング(学び直し)の充実に加え、前段階にある学校でも思考力や判断力を鍛えれば生産性がより向上すると見込まれるからだ。
<人的投資出遅れ>
経済研究産業所によると、日本の10年代の人的資本投資額は国民総生産(GDP)比で0.34%と米国の3分の1にとどまる。人への投資で出遅れた日本も、学校・大学を含めて育成のあり方を変える必要がある。「世界中の大学は創造性と批判的思考を育まなければならない。技術が進んだ世界で一段と価値を増していく人間中心のスキルだ」東京大の藤井輝夫学長は1月、英教育専門誌で訴えた。米ボストンの有力私立大ノースイースタン大のジョセフ・アウン学長との共同寄稿で、具体策にあげたのはHTHとも重なる文理横断の学びや実践教育だ。
東大は27年秋に新課程「カレッジ・オブ・デザイン」を設ける。修士を含む5年一貫で文理の枠を超えて学び、脱酸素や医療といった複雑で高度な課題の解決策を描く人材を育てる。ノースイースタン大は実践教育に磨きをかける。これまで149か国の3千社と組み、6ヶ月以上の長期インターンシップに学生を送り出してきた。今後は社会人向け学習コースも増やす。アウン学長は「機械が代替えできないロボットプルーフ(耐ロボット性)、AIプルーフ(耐AI性)のある人を育てる」と強調する。45年にはAIが人間の知性を超える「シンギュラリティー(技術的特異点)」を迎えるともいわれる。人間は技術革新がおきるたびに教育を見直し、人づくりに対応してきた。デジタルの大波も乗りこなしたとき、新たな未来の幕が開く。
◎要約
2045年にはAIが人間の知性を超え、世界で3億人分の雇用を奪うと予測される中、日米で、学校教育はどうあるべきかと、様々な策が講じられている。具体例として、米サンディエゴのHTHや、ボストンのノースイースタン大、東京大による、生徒の創造力や批判的思考力を育むべく、文理横断の学びや実践教育を通じた取り組みを挙げている。