読書と経験
最近テレビで「赤毛のアン」のドラマを放映しています。私自身子供のころから、本・アニメ・映画などを通じて大変親しみのあるストーリーなので、懐かしい思いで毎週見ています。皆さんご存知の通り、主人公のアンは孤児院育ちで、老兄妹に引き取られるまでは学校にもろくに通っていません。しかしながら、幼少のころから本を良く読んでおり、数々の局面で、本で培われたであろう知識と想像力を発揮し、人々の役に立ちます。知識だけでなく、アンの豊かな表現力や視野の広さという観点でも、やはり読書が情操教育に大きく貢献していると推察できます。アンは架空の人物ではありますが、長年、教育に携わってきて、やはり本の力って絶大だとつくづく思います。
一方、「経験」について考えさせられる映画作品に「スラムドッグミリオネア」というアカデミー受賞作品があります。インドのスラム街で育った少年・ジャマールが、クイズミリオネアというテレビ番組で、次々にクイズに正解していきます。劣悪な環境で育った少年がなぜこれほどの知識があるのか??それは、ジャマールの送ってきた壮絶な人生経験の中にすべて答えがあります。彼自身が実生活で見たり聞いたり、体験したことがヒントになって、クイズに正解することができるのです。この経験も学びには欠かせない要素ですよね。「人は経験からしか学べない」というのが私の座右の銘で、いまでも失敗を繰り返しては多くを学んでいます。そして最近、幼稚園に通う娘を見ていて思うことがあります。例えば、彼女は、虹の一番端の色が紫であること、ミミズが肥沃な土壌にしてくれること、どのようにイネが育って白米になるのか、クマゼミとアブラゼミの鳴き声の違いなどを知っています。すべて日常で体験したことが、ひとつひとつ彼女の知識を豊かにしてくれています。都会ではなかなか経験できないことがここではできるので、自然豊かな山口に移住してきて良かったとしみじみ思います。とくに幼少・児童期に机に向かう勉強以外で、自然の中での体験を通して、多くのことを学べることは貴重だと思います。子供時代に五感をフルに使って好奇心の赴くままに様々な体験をすることが人間の原点、学びの原点と思えてならない今日この頃です。
文:野田圭子