「ワックスがけ」ばかりやらせる理由

先日、自宅の床のワックスがけをしていてふと懐かしい映画を思い出しました。

『ベスト・キッド』という映画です。その映画にこんな名シーンがあります。

空手を習いたい主人公のダニエル少年に対し、師匠のミヤギさんは技や型を教えるどころか、ひたすら車のワックスがけばかりを命じます。 「右手で塗って、左手で拭く(Wax on, wax off)」。

来る日も来る日も同じ作業の繰り返し。しびれを切らしたダニエルが「空手を教えてくれるんじゃなかったのか!」と怒りを爆発させたその時、ミヤギさんが放った突きを、ダニエルの腕が無意識に、完璧に払い落とします。雑用のように思えたあの単純な反復動作こそが、強固な防御の「型」そのものだったのです。

当塾での英語指導も共通しているものがあります。

たとえ高校3年生であっても、英単語や英文法があやふやな生徒には、長文読解の演習をギリギリまでさせません。焦る気持ちを抑えてもらい、来る日も来る日も、ひたすら「単語」「文法」の基礎反復を徹底させます。

受験学年になると、多くの生徒や保護者様が「早く過去問を解かせたい」「長文演習に入らないと間に合わないのでは」と不安になります。ダニエル少年が「早く実践的な空手の型を覚えたい」と焦ったのとまったく同じです。

しかし、単語がわからず文法構造も見抜けない状態で長文を読ませても、それは「勘」で英文を眺めているに過ぎません。土台がないまま何十本もの長文を解いても、実力は積み上がらないのです。

一見すると地味で、退屈に思える基礎の徹底。 しかし、単語と文法が反射レベルで身についたとき、ある日突然、目の前の長文が「読める、構造がわかる」というブレイクスルーが訪れます。ミヤギさんの突きを自然と払えるようになったダニエルのように、実戦で無意識に使える武器になって初めて、過去問演習が生きてきます。

焦って応用へ飛びつく必要はありません。 まずは徹底的に「ワックスがけ」をやり切ること。急がば回れこそが、逆転合格への最短ルートです!